新設索道レポート|失われたロープウェイ

パークシティ ソルトレイクシティ
 アメリカのスキー場とロープウェイ Park City 8-MGD Quickslver
【クイックシルバー・ゴンドラ】
 2018/3/9 アメリカ合衆国/ユタ州・パークシティ

今回は、2018年2月に訪れた合衆国最大のスキー場、ユタ州のパークシティ(Park City)のレポート。2002年のソルトレイクシティ冬季オリンピックでアルペン競技の会場となったスキー場なので、名前を耳にしたことがある人も多いのではないだろうか。

新ゴンドラ クイックシルバー
パークシティの新ゴンドラ クイック・シルバー・ゴンドラ。

パークシティは、ソルトレイクシティ国際空港から車で40分という便利なロケーション。周辺にはディアバレーやスノーバード、アルタといったスキーリゾートが集中している。

「合衆国最大のスキー場」は、2015シーズンまでは、以前このコーナーでもレポートしたコロラド州のベイルだったが、パークシティに隣接するキャニオンズ・リゾートのオーナーでもあるベイル・リゾーツは、2014年にパークシティ・マウンテン・リゾートを買収し、隣接する2つのリゾートを統合する大規模な計画に着手。

その結果、2016シーズンからパークシティは総面積7,300エーカー(約30ku)コース数300以上、ピステ部分の総延長22マイル(約35km)索道41基の、単体のスキー場として全米最大となった。

これはひとつのスキー場で志賀高原全山(18のスキー場で約4.25ku)の7倍以上ということになる。


クイックシルバーゴンドラ

ベイル・リゾーツは5,000万ドル(約50億円)を超える資金を投じて、2つのリゾートを結ぶ新しいゴンドラを建設。それが今回の新設ゴンドラ、クイックシルバー。

設計から施工までを手がけたドッペルマイヤーは、この新ゴンドラの開業後の効率的な運用のために索道部門の人材の育成までを含むパッケージを提供。

搬器は8人乗りのMGDで、急角度で進入する中間駅を持つため、ブルホイールの構成が3つであることが特長。このゴンドラの開業によって、旧キャニオンズとパークシティを自由に行き来できるようになり、機動力のアップに伴う大幅な収益の増加が見込まれている。

パークシティにはいろいろな索道ガある
ベースと市街地を索道で結ぶヨーロッパ型リゾートのパークシティ

また、パークシティは北米のスノーリゾートでは珍らしく、市街地からスキー場ベースまでの移動が索道の乗り継ぎで行えるヨーロッパ型のアクセスを用意。上の写真の奥に見えるのが3連MGFのフロストウッド・ゴンドラ、手前が窓なしMGDのカブリオレ、ともに市街地と連絡している。

パークシティ上部の標高2800m以上のボウルは、すべてダブル・ブラックダイヤモンド。浮遊感抜群のディープ・パウダーでのツリーランは最高。

ちなみにパークシティはフリースキーのカリスマ、Tanner Hall(タナー・ホール)のホームグラウンドとしても有名。

今回、残念ながらまだオープン前だったが、あらゆるアイテムが揃った大型パークが7ヶ所もあり、X-Gamesなどでしか観られない世界の有名ライダー達が飛んでいるという。

パークシティスキー場 ジュピター・ボウル
標高3056mのジュピター・ボウル(Jupiter Bowl)

ソルトレイクシティ行きの直行便は日本からは出ていないので、ダラス(テキサス州)かロサンゼルス(カリフォルニア州)での乗り換えとなるのがネックだが、それを差し引いてもおつりがくるくらい、パークシティは素晴らしいスキーリゾートだった。

パークシティの公式紹介ビデオ


− 幻の「地下スキーリフト」−

パークシティは、19世紀の西部開拓時代にはSilver, Saloons and Snow(銀と酒場と雪)と呼ばれた北米最大の銀鉱山の街として栄えていた。

しかし、20世紀に入ると第一次世界大戦と世界大恐慌による銀価格の下落や大火などで銀鉱山は衰退
、1950年代末ごろには街から鉱夫や商人たちの姿も消え、ゴーストタウン同然になっていた。
パークシティミュージアム
世界初の地下スキーリフト(!)

パークシティ全体の鉱山を経営していた鉱山会社(ユナイテッド・シルバー・マイニング社)はなんとか巻き返しを図ろうと、「全米で最も軽い雪」といわれていた一帯の山々のパウダースノーに目をつけ、1963年に鉱山跡地でスキーリゾート事業を開始。これが大当たりとなり、以降、パークシティはスキーリゾートとして生まれ変わった*注)

リゾートとして再スタートしたパークシティは鉱山の貨物索道をスキーリフトに置き換え、ベースから山腹までを結ぶ4人乗りのゴンドラリフトも完成。ただ、このゴンドラは風に弱く、輸送能力も低かったため、翌1964年に世界初の「地下スキーリフト」が運行を開始。

幻の地下スキーリフト
地下スキーリフト(Underground Ski Lift)の実車

これは鉱山時代の地下548mのドレイントンネルに、鉱夫を運んでいた蓄電池式電車を改造してを走らせ、山腹までの約4.8キロを1時間かけてスキーヤーを運ぶというもの。つまり、正確にはリフト(索道)ではなく坑内鉄道なわけだが、なんともユニーク。

この冒険列車に大喜びしたスキーヤーも居たが、真っ暗なトンネル内にしたたる冷たい地下水や凄まじい騒音と振動、さらに貨車に設置したスキーラックからはみ出したスキー板が狭いトンネルの壁に接触してダメージを受けるなど評判は悪く、結局3年ほどで廃止されてしまった。

この「地下スキーリフト」の実車は、スキー場ベースから徒歩15分ほどのメインストリートにある「パークシティ・ミュージアム」で公開展示されている。

パークシティ メインストリート
西部開拓時代の街並みの面影を残すパークシティ・メインストリート

*注)銀の枯渇による衰退ではなかったので銀鉱山事業も1980年代まで続けられた


索道データ
名称 8-MGD Quicksilver
事業者 Vail Resorts
索道の方式 MGD
開業 2015年12月
キロ程 2,367m
高低差 113m
山頂駅 Miners Camp
中間駅 Pine Corn Ridge
山麓駅 White Pine
速度(毎秒) 5.1m
最大乗車人数 8人
最大輸送(毎時) 1500人
施工 Doppelmayr

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