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Banff Mount Norquay Gondola (TBD) |
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【マウント・ノーケイゴンドラ(計画線)】
今回は、昨年(2020年)2月に訪れたカナダ/アルバータ州のスキーリゾート、バンフ(Banff)で計画されている新ゴンドラの現地レポート。
バンフ/レイク・ルイーズリゾート名物の氷結したルイーズ湖
バンフは世界遺産に登録されているバンフ・ナショナルパーク(国立公園)がある都市で、地理的には1988年に冬季オリンピックが開催されたカルガリーに近いカナダの内陸部で気温はかなり低い。カルガリー国際空港には4月から10月までは日本から直行便が運航しているが、冬季はバンクーバー国際空港から国内線に乗り換えることになる。
ウィスラーに次ぐカナダのスキーリゾートとして日本でも人気の高いバンフ・スキーリゾートは単体のスキー場の名称では無く、「バンフ・スキー・ビッグ3」と呼ばれるレイク・ルイーズ(Lake
Louise)、サンシャイン・ヴィレッジ(Sunshine Village)、マウント・ノーケイ(Mount
Norquay)という3つの大型スキー場を中心とした一帯のスキーエリアの総称。
レイク・ルイーズスキー場から望むカナディアン・ロッキー。
今回滞在したのはビッグ3の一番人気のスキーリゾートであるレイク・ルイーズ。
カナディアン・ロッキーを望むルイーズ湖畔の洗練されたアルペンリゾートで、雪質がとても良くゲレンデでは日本人スキーヤー・スノーボーダーの姿もちらほら。
レイク・ルイーズスキー場のゴンドラはその名も「グリズリー・エクスプレス」。グリズリーとはもちろんあのヒグマの近縁のハイイログマのこと。
グリズリー・エクスプレス(レイク・ルイーズスキーリゾート)
ライトナーの施工によるグリズリー・エクスプレスは一見、普通のMGDのゴンドラリフトだが、スキーシーズン以外はハイブリッド(コンビリフト)編成で運用され、夏のゲレンデではこんな光景も見られるらしい。なんかクマに脚を掴まれて引きずり降ろされそう
コンビリフトの採用は索道の本場であるヨーロッパより北米の方が多いところに、様式より合理性を優先する北米らしさが感じられて興味深い。
【マウント・ノーケイの索道計画】
ではレイク・ルイーズの話はこれくらいにして、ここからは同じバンフ・スキー・ビッグ3のひとつであるマウント・ノーケイの索道計画について。
マウント・ノーケイの索道計画はバンフ・ナショナルパークの交通渋滞緩和と動植物の生態系保護を目的とした、鉄道・シャトルサービス・ゴンドラによる空中輸送を組み合わせたエコ・トランジットハブ(Eco-Transit
Hub)構想の一部という位置づけ。
このプロジェクトはバンフのマウントノーケイ・スキーリゾートのオーナー企業であるリリコン・キャピタル社(Liricon
Capital Ltd.)を中心とした機関投資家グループにより提案されているもの。
同社はこの構想を実現すべく2015年にバンフ鉄道駅とその周辺の13ヘクタールの土地を長期リース購入し、2019年9月に連邦政府機関とカナダ・ナショナルパークスに計画を申請。
エコ・トランジットハブ構想の索道路線の完成イメージ。
索道はバンフ鉄道駅からマウント・ノーケイ山頂までを結ぶもので、山頂までに4つの駅(停留所)を設置し、索道のタイプはMGDが予定されている模様。
2019年のエコ・トランジットハブ構想のプロポーザルに記載されている完成イメージには赤いラインでゴンドラの路線が奥のマウント・ノーケイ山頂の駅に接続されている様子が描かれている。
このプロポーザルには具体的な開業時期や索道のキロ程・ルートは記されていないが、周辺の地形をGoogleマップでチェックしてみるとバンフ鉄道駅からノーケイ山頂までの直線距離は2km前後なので、索道のキロ程(傾斜長)はそれ以上になると考えられる。
マウント・ノーケイスキー場トップ
山頂駅の設置が予定されるマウント・ノーケイスキー場は毎年カナダで一番早く10月にオープンするスキー場。バンフのバスターミナルからはシャトルバスで九十九折りの山道を通って約20分で到着し、ビッグ3の中ではバンフ市内から最も近い。
バンフのスキー場はどこも雪質が良く、ここも板がよく走る感じで標高2133mのトップから一気のダウンヒルはなかなか爽快だった。
最終日にバンフの街を散策がてら問題の索道プロジェクトの基点となるエコ・トランジットハブの建設予定地を見に行くことに。
カジュアルな観光地といった感じのバンフの街並み。
予定地の場所を調べるために立ち寄ったバンフ・ビジターセンターには計画に関する資料は何も置かれていなかったのでスタッフに尋ねてみると「バンフのゴンドラは街の南だよ。ここからバスで30分位。」という返事。
どうも「バンフゴンドラ」という街の郊外にある有名な観光ロープウェイのことと勘違いしているようなのでもう一度訊き直す。
すると「ああ、ゴンドラを造るって計画ね・・話は聞いたことあるけど、まだ何もできてないんじゃないかな。場所は鉄道駅の裏だよ。よくそんなの知ってるね。」と感心される始末で、エコ・トランジットハブ計画に対する市民の関心はあまり高くなさそうだった。
バンフ・エコ・トランジットハブ完成予想図。
上のイラストはエコ・トランジットハブの完成予想図。駅の裏手から見た構図になっている。中央のグリーンの列車の上空と右横の森に索道の搬器が描かれているのが判るだろうか(見えにくい時はブラウザのズーム機能で)。
では実際に予定地に行ってみることに。下の写真は上の完成予想図と同じアングルで撮ったもの。現在あるものはイラストの中央奥に描かれているバンフ鉄道駅のみで、手前側はご覧の通りの広大な空き地。
バンフ鉄道駅とエコ・トランジットハブ予定地。
1859年開業のバンフ鉄道駅は、かつて大陸横断鉄道の拠点として栄えた駅だが現在はツアーレイル(観光鉄道)の駅となっている。
ここには写真を撮るために小一時間居たが、その間駅に停車した列車は無く、超・大編成の高速貨物列車(貨車100両以上・ホーム通過に10分以上かかっていた)が轟音を立てて1度通過したのみで駅舎内は人影もまばら。
北米は自動車社会。地元以外のほとんどのゲストはカルガリー国際空港からの長距離バスか自動車でバンフにやって来るので鉄道駅は前述のバスターミナルにその役目を譲った形だ。
駅舎内に設けられた計画資料の展示コーナー。
駅舎内には計画のパネル展示コーナーが設けられており2019年の秋に、ここでリリコン・キャピタル社オーナーによる計画のプレゼンと記者発表が盛大に行われたそう。
エコ・トランジットハブ構想は、日本の黒部・立山アルペンルートのような環境保全の一環としてのエコ・トランジットを目指すものなので時流に合った試みと言えそうだが、計画の規模はカルガリー空港からバンフまで専用鉄道路線を新設し(在来線はナショナルパークへ移管)、さらにエコバス路線と索道も新設するという壮大なもの。
カルガリー空港−バンフ間の鉄道の新設だけでも6億カナダドル(約490億円)かかるといわれているこの大事業を私企業1社の主導で進めるというのはかなり大変なことかも知れない。
2020年1月、計画に対するカナダ・ナショナルパークスからの一回目の回答は、申請の却下。
現在、同社は規模の縮小も視野に入れた計画内容のブラッシュ・アップを行い、再申請に向けて準備中とのことなので今後の推移に注目したい。
夜明けのルイーズ湖。
バンフ/レイクルイーズ・スキーリゾートの公式紹介ビデオ
名称 |
Grizzly Express |
事業者 |
Lake Louise Ski Resorts |
索道の方式 |
Hybrid (MGD + Quad Lifts) |
総延長 |
2,063m |
高低差 |
468m |
速度(毎秒) |
5.0m |
乗車時間 |
7分30秒 |
最大乗車人数 |
6人★ |
最大輸送(毎時) |
2,800人 ★ |
施工 |
LEITNER |
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★ MGD(単線自動循環式)のゴンドラリフトのみで運用した場合の値。
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