失われたロープウェイ

城山ミニロープ(戸倉上山田温泉ロープウェイ)
  
DISCOVER JAPANの駅スタンプが描かれた国鉄戸倉駅改修落成記念急行券

千曲川の畔に位置する、信州の戸倉上山田温泉は左岸にある上山田温泉と戸倉温泉、右岸にある新戸倉温泉の3つ温泉の総称。善光寺参りの精進落としの「いで湯」の街として年間を通して多くの宿泊客が訪れます。

城山ミニロープは、12名乗りの小型搬器が温泉街を見下ろす城山(じょうやま:標高612m)の山頂駅(城山駅)と温泉街の山麓駅(温泉駅)を3分で結んでいた1969年開業の民営の索道。

夜になると「戸倉上山田温泉」のネオンサインが灯る、温泉街のシンボルでもある城山は荒砥城という戦国時代の山城があった山で、現在は千曲市城山史跡公園として館や兵舎・櫓などが中世の史実に基づいて復元されています。

1965年(昭和40年)に、城山の山頂に善光寺の別院である城泉山観音寺が落慶すると、折からの高度成長の追い風に乗り城山の観光開発が進み、1967年には観音寺裏手の現在の史跡公園一帯に遊園地・サルの動物園・植物園・レストランなどの観光客向けの施設が完成します。

2年後の1969年(昭和44年)には、日本歴史館と城山ミニロープが相次いでオープン。

これらのレジャー施設ができたことによって、それまで「大人の温泉街」というイメージもあった戸倉上山田温泉に、家族連れや若者の観光客が多数訪れ、ミニロープも大盛況。


城山山頂遊園地に完成した観覧車と飛塔。出典:上山田町 編纂「写真集 上山田の百年」
国内旅行ブームがおとずれた1973年(昭和48年)には、戸倉上山田温泉の年間の宿泊客が100万人を突破。温泉街は空前の賑わいをみせたそうです。

ページトップの1973年の国鉄(JR)戸倉駅改修記念急行券には、国鉄が万博終了後の旅客確保策として、1970年から全国展開した個人旅行拡大キャンペーン「DISCOVER JAPAN:ディスカバー・ジャパン」の文字が見られます。

急行券にはキャンペーンにあわせて国鉄全駅に設置された駅スタンプ(通称DJスタンプ)の絵柄が印刷されており、戸倉駅のスタンプには入浴する女性と城山ミニロープのイラストが描かれています。

日本を発見しながら、自分自身も再発見しよう、というコンセプトだったディスカバー・ジャパンは「遠くへ行きたい」などの流行語を生み、団体旅行から個人旅行への旅行スタイルへの転換期だった昭和40年代の時流にマッチして、キャンペーンとして一定の成功を収め、国内の観光事業の発展にも貢献したとされています。


訪問記】2006年12月

ここを訪れた時はちょうど信州が舞台のNHKの大河ドラマ「風林火山」の放映が開始される直前だったため、史跡公園にはたくさんの幟が立っていました。

歴史館の隣にある山頂駅舎跡は現在管理されており、建物の入口が封鎖されています。

索道運行時代の名残りとして、駅舎前のアーチ看板の裏側に「城山駅」の文字が残っていました。



城山駅舎跡(マウスオーバーでアーチ看板の写真に)。
道路から見えるゴンドラ発着所から、この索道の搬器はミニロープの名の通り、かなり小さなものだったことが解ります。一方、山麓駅だった「温泉駅」があった場所は、更地化(駐車場?)されていて、当時を偲ばせる物は何もありませんでした。

当時の写真を見ると温泉駅のゴンドラ発着所は、かなり山肌に接近している位置にあったようで、索道の最大傾斜角は42度(θ=約37.9°)と斜行エレベーター以上の急勾配だったようです。

発着所跡

山頂一帯にはレジャー施設時代の面影がところどころに見られ、城跡公園に行く途中の枝道には植物園のゲートとチケット発券所、レジャー関連施設だったと思われる建物の遺構などが残っていました。

今回泊まった旅館の仲居さんが、チャキチャキタイプの気さくな人だったので、ロープウェイの話を聞こうと思い雑談の途中で、

私 「そう言えばここにはロープウェイが・・」(まだ言い終わってない)

仲 「ロープウェイはもう無いわよ!」

私 「あ・・いや、それは知ってるんですが・・いつ頃あったんですか?」

仲 「あたしが中学生の頃よ!」

私 「・・・そうですか・・(年齢わかりません)で、何でなくなったんですか?」

仲 「乗る人がいないからよ!」

私 「・・・・・・。」

と、インタビューは失敗に終わりました ;

開業当時の城山ミニロープ。
出典:上山田町編纂 「写真集 上山田の百年」 

索道データ
名称 城山ミニロープ
事業者 城山観光開発
所在地 長野県千曲市
山頂駅名称 城山
山麓駅名称 温泉
開業 1969年11月8日 
廃止 1992年 
索道の方式 3線交走式
水平長 170.69m
傾斜長 216.5m
高低差 132.72m
支索の最急勾配 42.08°
支柱(基) 1
搬器の種類・数 箱型 2
搬器の名称  
最大乗車人数 12人
施工 日本ケーブル


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